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    ピッキング今昔

     ピッキングって言ったからって決して“錠前破り”のことじゃありません。私が書くからには当然ギターのピッキングのことです。

     今となってはどうでもいい話なんですが、私がギターを始めた当初の話です。
     実はその頃、ロック・ギターのピッキングってのは強いのが正しいってのが常識だったのです。ギター雑誌のギター講座やギターの教則本のすべてにおいて、
    「ピックを弦に対して斜めになるべく強く当てる!」
    って書いてあるのが普通でした。私が非常によく覚えている雑誌の記事ってのがありましてね、それはディストーション・サウンドの創り方についてだったのですが、

    「ディストーションのレベルを上げるのでなく、右手のピッキングの強さで歪み(ゲイン)を創るように心がけること!!」

    ってのがありました。今考えると、“そんなアホな!?”とも思えるのですが、同じ歪み具合を創るのに、ディストーションのレベルを上げて弱いピッキングの場合と、ディストーションのレベルは下げて強いピッキングである場合では、後者の方がいわゆる“音痩せ”がしにくいので、まあ正しいっちゃ正しいのです。だからみんな“強いピッキング”を心がけたモノです。

     ところがですねぇ~、1983年にイングヴェイ・マルムスティーンがデビューしてからおかしなことになっちゃったんですよ(笑)。彼はヴァイオリン風の超速弾きを引っさげて世に出てきたワケなんですが、彼は非常に軽いというか弱いピッキングなのにもかかわらず、素晴らしいサウンドだったんです。

    「ロック・ギターのディストーション・サウンドは、強いピッキングこそが正義!!」

    ってのが、彼の出現によって一気に崩れちゃったのです。っていうか、私はそう思っているんですけどね(笑)。みんな気づいちゃったんですよ!!良い音を出すにはピッキングが強いとか弱いとかじゃないんだって!!要は感性の問題だったんです。もちろん、一般のアマチュアが普通に手にすることができるギターやエフェクターの品質が、時代とともに良くなったこともありますが、“良い”ピッキングのタッチであれば強いとか弱いとかに関係なく良い音を出せるのです。実際問題として、イングヴェイのようなフレーズを弾くには、従来の“強いピッキング”では物理的に不可能ってこともあり、彼の登場以降、弱いピッキングってのが大流行!!いつの間にか雑誌やら教則本やらから「ピッキングはなるべく強く!」ってのが消えました(笑)。

     私も当時、この弱いピッキング・スタイルにトライしてみたんですが、どうにも上手くいかないというか、弾き心地が良くないというか、寝覚めが良くないというか(笑)、そんな感じでしたので、結局やめました。だから私のピッキングはギターを始めた当時の、「強いのが正義(笑)」のマンマなのです。ですから、現代的な超速弾きは苦手っていうか物理的に不可能な感じですし、6弦を切るのかもしれませんな。きっと軽いピッキングの人は6弦を切るのなんて信じられないでしょう!?どちらがイイか!?って話じゃないですが……。

     まあ、ロック・ギターの歴史なんてピアノなんかに較べたらまだ“赤子以下”ですから、メソッドが確立されている途上なんですな。
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    プロフィール

    鈴木浩憲
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    人とは一風変わった音楽哲学を持ったギタリスト/シンガーソングライター。オフィシャル・ウェブサイトでは、オリジナリティあふれるロック・ギター講座を展開。


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